2012年果実の売れ筋ランキング
日本農業新聞の許可を得て転載                .
 2012年1月13日、日本農業新聞が1012年果物売れ筋ランキングを発表しました。果物販売者サイドのスーパー、百貨店、生協、卸売53社を対象に調査し、今年どのような果物を消費者に買って貰えそうかを長年の経験から検討した結果のランキングで、同新聞社の許可を得て一部を転載します。さらに、上位にランクされた品種のうち、品目、地域が偏らないように選んだ一部品目・品種について、品種育成者・生産者サイドからのセールスポイントを紹介していただきます。届いた原稿は、いずれの果実についても品種育成者の、そして、生産者の果実にかける熱い思いが伝わってくる内容です。近未来の果実が大筋でどの方向に向かおうとしているかを読み取っていただきたいと考えます。
1.2012年売れ筋ランキングについての考察 (日本農業新聞)
 @ 皮ごと食べる種なしのブドウ(‘シャインマスカット’、‘ナガノパープル’、‘瀬戸ジャイアンツ’)が上位にランクされていることから分かるように、食べ易さが消費者に支持される要因の一つ。
 A カンキツ4品種(‘せとか’、‘デコポン’、‘ゆら早生’、‘肥のあかり’)がベストテンに名前を連ねたが、糖度が高く、食味の良いことが特徴。
 B 柿(‘平核無’、‘刀根早生’)のランク上昇が目立ったのは消費者が食べ易く、買い求めやすい1個80〜90円での販売ができるためか。需要の高まりが感じられる。
 C 上位の品種は流通・販売関係者には知名度が高いが、消費者にはまだまだ知られていない。今後は消費者に知ってもらう努力が必要。

2.果実の売れる条件についてのアンケート結果についての考察(上図参照:日本農業新聞)
 @ 食味が良いこと、価格が値ごろであることが圧倒的に重要。
 A 東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、安全性への関心が高まっている。

3.事務局コメント
 最重要品目である温州みかんは品目として消費者にアピールできる力はかつてほどない。その中で、‘ゆら早生’ 、‘肥のあかり’、‘青島温州’、‘寿太郎温州’の健闘は、この品種であれば必ず美味しいとの認知が進んでいることによる。今後は厳重な品質・出荷管理で品種名を汚さない努力が必要。一方で、温州みかんを品目として販売することも依然大切で、学術分野、業界、消費者を問わず認知されつつある「健康増進効果・β-クリプトキサンチン含有」のセールスポイントや産地名のブランドで、温州みかんという品目名としても盛り上げたい。 

*上位にランクされた品種から‘せとか’について掲載します(事務局)。

‘せとか’を作りたい!
長崎県南島原市 松川正輝            .
 この度、‘せとか’が2012年果物売れ筋ランキングで二位に選ばれたことを嬉しく思います。私は長崎県の島原半島で‘せとか’の加温栽培に取り組んでいる松川正輝と言います。今回この様な文章を書かせていただき各関係機関の皆様に厚くお礼申し上げます。
 私が‘せとか’を作りたいと思い始めたのは少し悲しい出来事からでした。7年前、当時私は果樹研究所(興津)の研修生で、実家が台風の被害にあったと聞き急いで帰りました。父は地域で‘せとか’栽培に早くから取り組んでいた中の一人で、市場でもある程度の評価を得ていた頃です。帰ってみると案の定ハウスも樹もめちゃくちゃで、ほとんど収穫もできず、ハウスを解体し、修繕するため栽培を断念するしかありませんでした。私はせっかくみかんの事に興味を持ち始めた頃で残念でなりませんでした。でも私より父の方がとてもむなしかったと思います…。
  そんな中、より一層‘せとか’を作りたいと思ったのは、興津時代の研修旅行である市場に行った時、一人の仲卸の方との出会いからでした。『あなたの産地の‘せとか’は魂が入っている、箱を開けた瞬間にワァッと感じるパワーがある、素晴らしい物を作っていて、あなた方産地と共に骨を埋めるつもりでいる』とまでおっしゃってくれました。その方は私の産地の事をよく知っていて、また‘せとか’作ってほしいと言われました。私は凄く心に響きなぜだか涙が出たのを覚えています。そこまで産地の事を気にかけ、まるでわが子のように果物を扱っておられ、心待ちにされている姿に必要性を感じ、卒業後にまた‘せとか’を作りたいと強く思いました。
 その後、果樹研究所を卒業し、‘宮川早生’に高接ぎを行い、3年間のブランクはありましたが再び収穫を迎える事ができました。
 それから5年目(父の頃からと合わせると10年目)、‘せとか’栽培は糖度が上がりにくいこともあり、着果ストレスをある程度かけ、あまり大玉に作りすぎないようにしています(大玉すぎると低糖や、す上がりが発生しやすいため)。隔年結果を防ぐため花が確認できたら、手直し剪定で上部に夏芽が出るようにし、‘せとか’の枝にはトゲがあり傷がつかないように年中ハウスで被覆し、さらに一つ一つサンテを被せたりします。加温栽培により独特のアンコール臭も抑えられ、皮も房もしなやかで食味がよく、果汁も多く、外観も輝くような抜群の仕上がりになります。
 私は今でも、‘せとか’を作りたいと思わせてくれた仲卸さんと連絡をとったり、市場の方、お店の方、選果場の方、いろいろな方々と出会う中で、常に良い物を作り続けるというプレッシャーを、日々の作業のパワーに変えています。そして毎年、試食販売を店頭でさせていただき、消費者の生の声を聞き、こちらも‘せとか’の良さをアピールすることで、買って頂いたり、美味しいといってもらう事の喜びを心の糧にしています。
 あの時、台風の被害にあった事や多くの人と出会ったおかげで私の‘せとか’に対する思いはすごく強いものになりました。このような環境を作ってくれた、両親、地域の方、お世話になっているすべての人たちに感謝し、作る者がいて、選果する人、運ぶ人、せる人、商品にする人、買う人、食べる人すべての方が喜んでくれる‘せとか’をこれからも作り続けていきたいです。そしてそんな事が‘せとか’の消費アップやみかん全体の消費アップに繋がれば幸いです。